
広島市の比治山山頂に立つ放射線影響研究所(放影研)。
原爆被爆者ら約12万人を追跡調査し、放射線の人体への影響を研究している。
差別を恐れる被爆者の心情への配慮から"山"という隠語でも呼ばれる。
膨大なデータは国際的な被ばく線量基準を生んだ。
福島原発事故発生後の健康管理や食品検査にも活用されている。しかし、福島の内部被ばくの被害に通じる、ある未解明の課題を残していた――原爆投下直後に降った放射性物質を含む黒い雨など、残留放射能の影響だ。
放影研の前身の米国原爆傷害調査委員会(ABCC)は、残留放射能の深刻な被害の可能性を把握しながら、調査を中断していた。背景には、原爆投下国と被爆国の研究者の意見対立があった。
米国に眠るABCC文書や当事者の証言で被爆者調査を検証するとともに、放影研へ複雑な思いを抱く広島・福島の人々、過去と向き合い"フクシマ後"のあるべき将来像を模索する放影研の研究者たちを追う。